白洲次郎に学ぶ「カントリージェントルマン」という生き方
家いちばのサイトでは「古民家」を探す人が最も多く、人気カテゴリーです。すでに田舎の古民家を買い、少しずつ自分でDIYしながら、庭先では家庭菜園で土いじりをし、時には友人を呼んで一緒に野良仕事で汗を流し、そういうライフスタイルを楽しんでいる人たちがたくさんいます。 あれからこんな風に使ってます(売主への手紙) https://ieichiba.com/thanks-letter 「いつかは自分も」と考える人が増えている テレビでもこのような田舎暮らしを紹介する番組を毎日ように見かけます。それは、視聴率がとれる話題であることの裏返しです。「いつかは自分も」と考えている人がたくさんいる証拠です。このムーブメントはいつ頃からだったのでしょう。最近では、コロナ禍で都会で暮らしづらくなったことをきっかけに、田舎への移住希望者が急増したことは記憶に新しいところです。 田舎暮らしの先駆者、白洲次郎 その元祖とも言える人物がいます。白洲次郎です。戦後の占領下で、当時首相だった吉田茂の側近としてGHQと対等な姿勢で交渉に臨んだ唯一の日本人として知られる人物です。神戸の貿易商として巨万の富を築いた白洲家に生まれ、まだ自動車が珍しかった大正時代で若い頃から高級外車を乗り回し、イギリスのケンブリッジ大学に留学という経歴に加え、鼻筋の通った日本人離れした風貌もあって、女性ファンも多く、歴史上の人物としては特異な存在でもあります。 白洲次郎の流儀(新潮社) https://www.shinchosha.co.jp/book/602118/ 「馬鹿げた戦争」からいち早く疎開 そんな次郎が鶴川村(現在の東京都町田市)に放置されていた農家を買い取って居宅として構えたのが昭和17年のこと。日本軍がアメリカに真珠湾攻撃を仕掛け太平洋戦争へと発展していった直後です。海外生活も長く国際感覚のある次郎から見れば「こんな馬鹿げた戦争はありえない」と早々に東京が火の海になることを見越し、都心から疎開しておこうという考えもありましたが、それよりも根底にあったのが「カントリージェントルマン(直訳:田舎紳士)」という哲学でした。 英国紳士からの影響「カントリージェントルマン」 それは、次郎がイギリスの大学で学んだ頃、多くの英国紳士との交流から影響を受けたことのひとつでした。あえて中央から離れた場所に住み、外から目を光らせ、渦中にある政治家では見えないものを見て、いざという時は中央に出て行って彼らの姿勢を正す、そういう貴族としてのあり方でした。実際に、イギリスでの次郎の友人の多くが、ロンドンにアパートを持ち、郊外に邸宅を持つという暮らしでした(「白州次郎の流儀」より)。 戦争にも反対だった次郎が、カントリージェントルマンとして外から日本の政治を正していこうと決めた気概をとても感じるところです。その後、終戦を迎え、彼が戦後の日本のために尽くした功績は計り知れません。それも、彼が田舎に疎開して、卑怯者とも言われながらも信念を貫いて生き延びてくれたからに他なりません。 農作業や大工仕事にいそしむ 次郎はこの農家住宅に「武相荘(ぶあいそう)」と名付けました。武蔵と相模の間の場所にあったことと、「無愛想」とをかけた洒落になってます。憎いネーミングですよね。彼は、農家の無骨な造りに手を焼きながらも、愛情を込めてそう呼んだのでしょう。しょうがないな、とか言いながら、コツコツと農作業や大工仕事に勤しむ次郎の姿が目に浮かんできます。 妻の正子も愛した住処 ところで、この田舎暮らしに妻の正子の存在も欠かせません。次郎と同じく裕福な家庭に育ち、海外生活も長く、価値観が近いところがあったのでしょう。次郎と一緒に農作業をやることはなかったものの、その後、随筆家としてこの住処で創作活動を晩年まで続けました。 白洲正子(ウィキペディア) https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E6%B4%B2%E6%AD%A3%E5%AD%90 誰もが実践できる時代に いずれにしても、住む場所がその人の人生に与える影響の大きさを感じるところです。さて、このような偉人話は、選ばれし者のみの特権なのでしょうか。いや、時代は変わっています。もし、次郎や正子の生き様に少なからずの共感や憧れを抱いたのなら、実践してみるのもありでしょう。だって、すでにもうやってる人はやってます。田舎の古民家をネットで探して、フォームで問合せをして、週末でも現地に行ってみてイメージを膨らませ、そこから先はインスピレーションです。 「さっさとやれ」の精神 次郎は戦後日本の歴史を築きましたが、あなたの歴史はあなたが作るものです。次郎の信条のひとつに「Play Fast」があります。元々は彼のゴルフプレーに対するもので、日本のゴルフ界に彼が広めたルールとしても有名ですが、「さっさとやれ」という意味に何か普遍的な大事さ感じます。さっさとやれ、人生は一度しかない、そう言われているような気がします。 (家いちばコンサルタント 藤木哲也)
- 345
- 1