「設計図」を読みこなす
家を買うか建てるかすれば、建物の図面が付属で付いてきます。ただし、少し古い家を買う時には、ちゃんとした図面が残されていないことも多いです。新築で建てられた時にはあったはずの図面ですが、その後、それらがきちんと保管されていなかったり、紛失してしまっていたり、売買時に引き渡すことを忘れてしまっていたり、かなり扱いがいい加減になってしまっている「設計図」ですが、とても大事なものです。 設計図面を大事に保管しよう 図面をしっかり保存しておくことが、その後の建物の改修やメンテナンスの際に必要となるものであり大事です。もし、売却して持ち主が変わってしまう場合でも同じことです。図面を保管することを法律で義務付けしてもいいくらいですが、今のところそうなっていません。 さらに大切な「確認申請図」 特に、建物を建てる際に許可申請を受けた時の図面がとても大事です。この許認可の手続きを「建築確認」あるいは「確認申請」と呼びますが、どういう内容で許可を受けたのかの証拠となるため、次に増築などする際に手続き上これら図面(確認申請図面)が必要となります。 これがないと、増築や改修等の許可が下りず、何もできなくなってしまいます。そうでなければ、これらを「復元」することを先にやるしかなく、少なくとも数十万、場合によっては数百万もかかることがあります。許可が下りた証拠書類がないわけなので、「違法建築」との疑いをかけられても、それを簡単に否定もできません。 したがいまして、まず、新築で家を買ったり建てたりした人は、これら図面などの書類を大事に保管してください。役所にも複製したものが保管されますが、保管期限(短い)があり、それを過ぎると破棄されます。自分の家のことは自分で守ってください。 図面の種類もさまざま さて、ひとことで「図面」と言っても、確認申請図面以外にも様々な種類のものがあります。大きくは、建物を建てる(工事に取り掛かる)前の段階で作成するものを「設計図」と総称され、建物を建てる最中には「施工図」、建物が出来上がってからは「竣工図」の主に3種類があります。 しばしば工事途中に「設計変更」がなされる場合もあるため、設計図と実際の建物で若干異なることもあります。そのため、設計図は何度も書き直される運命にあり、それが最終版なのか確認が必要です。その意味で竣工図が最終形として信頼できますが、大きなビルなどでない限り竣工図が作成されることは稀です。 どの図面が「本物」なのか? そのため、確認申請図面は必ず最終形でなければならないものであるから、信頼できる図面のひとつとなります。ただし、建物細部の詳しい情報まではその図面に書かれてありません。このように、図面それぞれに一長一短があり、これらを念頭に図面を読みこなすことに高い専門性が必要であり、詳しくは建築士などに相談することになります。 そもそも、「設計」とは何か?図面はそのプロセスの成果物でしかありません。図面を理解するには建築設計そのものの理解を深めることが近道かもしれません。 (次回に続く) (家いちばコンサルタント 藤木哲也)
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