不動産を「売る」ことを恥とする文化
家いちばという個人で気軽に不動産を売り買いできるサイトを目指してもう10年くらいやっているが、2025年3月現在の掲載件数(売り出し中物件の数)がまだ1000件ほどしかない。国内には使われてない空き家が500万戸ほどあると言われてるのに比べてその0.1%以下だ。多くのは空き家は売ることで新しい利用者にバトンを渡し、空き家が空き家でなくなる可能性が高い。なのにである。 空き家を売らない理由 「売ればいいのに売ろうとしない」空き家の持ち主。この人たちの心理をいつも考えながらこのサイトを運営している。そこで思うのが、何か「売ってしまうことの後ろめたさ」があるのではないか?だ。特に田舎でありがちだが、近所の人の目がある。「あの人は家を売ってしまったんだって」という噂は、どちらかというネガティブなものだ。その地域を見捨てた、あるいは何か悪いことをしていられなくなったのか、など。全く余計なお世話だ。 そうでなくても、もしあなたの友人が買ったばかりの家かマンションを「売った」と聞けば、「何か失敗したのか?」や「もともと転売目的だったのか?」など、そんな詮索をしないだろうか。これも余計なお世話だ。仕事や家族の事情などで住む場所を変えるのは個人の自由だ。 これらを考えると、日本人にいつの間にか「不動産を売ることは恥ずかしいこと」という認識が根付いてしまっているかもしれないことだ。これは何者の仕業なのか。不動産の流通(売り買いすること)が活発になれば、日本経済にとってもプラスになるはずだから、国はもっと国民に啓蒙してよいところなのだが。不動産業界においても然りだ。 売ることを意識すれば状況は変えられる 私が売ることをもっと勧めたいのは、別に我田引水で言ってるわけではない。「売ること」を意識することで、自分の家をもっと大事にするようになるからだ。外壁が汚れてきたら塗り直す。雨漏れしたらすぐ修繕する。そうしておかないと、いざ売る時に困るからだ。今の日本では、この逆の状況が蔓延っていて、売らない、すなわち「ずっと自分が住む」のだから、それで放ったらかしになっている。売るに売れない空き家が大量に生まれて、空き家問題となっている。 さらには、家に限らず、ビルやホテルや公共施設や、あらゆる建物が老朽化のまま放置されている。そして、解体するしかなくなりスクラップアンドビルドを繰り返している。これが日本人を経済的に貧しくしている原因のひとつとなっている。この流れを止める最初の一歩が、「売ることを恥と思わない」ことだったりするわけだ。 (家いちばコンサルタント 藤木哲也)
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