不動産を直接売り買いする人たちの掲示板「家いちば」

保健室だより

古民家などを後世に残す「重要伝統的建造物群保存地区」

古い建物が次々と壊されていく日本の現状 都市開発が進む一方で、昔から残されてきた古い建物が次々と壊され、消えていってます。中には歴史的に貴重な建物も数多く含まれ、惜しまれながら解体されてます。ビルやマンションを建てたほうが儲かるからにほかなりませんが、長い目で見た時の損失ははかりしれません。しかし、どうしても人間というものは目先のことで精一杯になりがちで、なかなかこの流れを止められません。ヨーロッパなど海外の都市と比べても、日本がこの分野で遅れていることは明らかです。 重要伝統的建造物群保存地区が広がっている しかし、日本政府も指をくわえて見ているだけではありません。その成果が文化財保護法による「重要伝統的建造物群保存地区」です。名称が舌を噛みそうなほど長々しいですが、通称「重伝建(じゅうでんけん)」と呼ばれているものです。1976年に第一号が指定されて以来、着実に増えてきて、現在(2024年8月)、全国129箇所に重伝建ができました。県あたり2〜3か所という計算ですから、みなさんの地元の近くでも日帰りで行ける範囲に重伝建があるのではないでしょうか。 重伝建の一覧はこちらで(文化庁ホームページ) https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/judenken_ichiran.html 賑わう伝統的建物の町並み 重伝建地区に行ってみると、要するに観光地のようなものです。特に昨今は若い人にも「古民家カフェ」やスイーツ店、パン屋さんなどが人気で、中には大内宿のようにさながらテーマパークのごとくショップが並び、大型観光バス用の巨大な駐車場を備える重伝建もあるくらいです。 大内宿(福島観光TRIP) https://www.fukushimatrip.com/135 最近では、飛騨高山のようにアニメの聖地として重伝建が取り上げられるケースも増えていて、これがさらに来訪者を押し上げる効果になっています。アニメの力は世界から人を呼び込みます。観光に力を入れる市町村はこの流れになんとか 乗りたいと躍起になっていることでしょう。 重伝建の制度上のメリット さて、重伝建という制度についてですが、まず大きいのが、この地区に指定されると、建物の改修費の大部分について国の補助が受けられる点です。その代わり、改修する内容に制限と審査がかかるようになっています。すなわち国民の税金で歴史的な建物を残していこうというものですが、くだらない公民館建設とかに税金を投じるよりははるかに有意義な使い道と思います。 ところで、似たような制度で「登録有形文化財」というものがあります。これも審査により文化財指定を受けると、その証としてプレートが授けられます。街でレトロな建物を見かけたら、この緑のプレートが掲げられてないかよく見てみてください。登録有形文化財は、重伝建と違って、1つの建物でも単体で指定できます。しかしながら、この制度ではわずかな税金の軽減措置くらいしかなく、法的な拘束力も弱く、文化財指定になったにも関わらず、所有者の事情で解体することも止めることができません。 貴重な建物を売ることで次の時代にバトンを渡す 今この瞬間でも、古い貴重な建物が解体の危機にさらされています。それらがすでにかなりの数が取り壊しされてしまいましたが、まだまだ、全国各地にたくさん残っています。その一部が、家いちばのようなサイトで売られてもいます。安易に解体するよりは、売買によって新しい所有者にバトンを渡すことで、建物保存の可能性に繋げていく流れができているとすれば、この事業に携わっている者としてとても嬉しい限りです。 「残すこと」が今を生きる我々の義務 「建物を残すか残さないか」、それを決めるのは未来の人たちです。現に、今の重伝建で残されている建物も、かつては壊すか壊さないか迷った時期もあったでしょう。しかし、その当時の人たちが頑張って残してきたもので、今の我々が潤ってるわけです。今を生きる我々がやるべきことは、とにかく「残すこと」です。今は築20年ほどの建物も、あと100年経てば文化財です。しかしそれも、築30年、60年という節目を超えていかなければ、そうなりません。新しい建物も必要ですが、古い建物もしっかり残していくこと、これが当たり前の時代が来ることを祈っています。 (家いちばコンサルタント 藤木哲也)

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