「デベ」という生き物
Netflixの「地面師たち」が人気ですが、このドラマで詐欺の被害者として描写される「デベロッパー(デベ)」の人たちに多少の同情と関心を持ったかもしれません。私自身もその業界にいた者として、ひとこと感想を述べたいと思いました(ネタバレあり)。 国内では、三井不動産、三菱地所、住友不動産などの財閥大手を筆頭に、東急不動産、野村不動産、それに続くダイワハウスや積水ハウス(これは言わずと知れたドラマのモデル)などのハウスメーカー系や、最近ではヒューリックのようなファンド系が台頭してきています。森ビルのような再開発を主力とする企業もいます。私がいたのはマンション専門のデベロッパーでしたから、これもまた独特な業種ですが、不動産ファンドにもいたことがあるので、たいていの大手デベの人たちの顔も見てきました。 さて結論として、このドラマのリアリティはなかなかと思いました。日常的に数十億単位の社内稟議、決裁が繰り広げられ、それに向けて準備や根回しをする担当者のプレッシャーとその裏腹としての「恍惚感」。はっきり言ってそれによって給料はたいして変わらないサラリーマンでしかありませんが、何か魔物に取り憑かれたようなところがあると、今振り返ってもそう思います。その緊張感が十分に伝わってくるドラマの潔い演出に心地よいものすら感じました。「地面師に自分が騙される」なんてまさかにも思っていません。その意表をつかれたような青柳(山本耕史)の表情がとてもリアルでした。 詐欺グループのリーダー、ハリソン山中(豊川悦司)のセリフが印象的です。「人類の歴史は早い話、土地の奪い合いの歴史」、まさしくそれ。土地の所有権という概念を人間が勝手に作り出し、その妄想に取り憑かれているだけ。達観して見れば、そういうことなんでしょう。 家いちばというサイトで、日々たくさんの商談が繰り広げられています。中には、特に目的もなく、「とりあえず買ってみるだけ」、「広大な山林を自分のものにしたかった」という動機もたまに見ます。この人たちが「魔物」に心を奪われていないか、気になる今日この頃です。でも、それが最も「プリミティブでフェティッシュなエクスタシー」なんだから、まあ仕方がないか。 (家いちばコンサルタント 藤木哲也)
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