外国人が日本の空き家に熱い視線を
テレビでも話題だが 先日、テレビ東京のワールドビジネスサテライト(WBS)で「最近、空き家を買う外国人が増えてる」というテーマで家いちばが取り上げられた。確かに、この3年間で倍増している。まだ全体の比率としてはわずかでしかないが、見逃せない傾向である。 テレビ局の企画意図としては、「外国人が空き家問題の切り札になる」と言いたいようだったが、元々、どちらかというと売り物件が圧倒的に少なく、日本人の買い手同士で「奪い合い」の状態だから、その競争相手が増えるだけで、これが空き家問題の解消になるという段階でもない。ただし、観光業界がインバウンドによって大きな影響を受けていることを考えるとやはり無視できない流れであろう。世界の人口は国内よりも絶対的に大きいものだ。 外国から見る日本の不動産 外国人が日本の不動産を買い漁るというのは、新しい話題でもない。ニセコなどの北海道のスキーリゾート地が外国人街のようになってる話や、外資のファンドが超都心のオフィスビルを国内史上最高額で買収されたりなど、よく耳にすることだ。その次の標的か「空き家」となっただけだ。海外の視点で見ると、日本の非常識も常識に変わる。その発想の転換としては学ぶところがある。 セルフサービスが外国人には向いている ここに家いちば独自の事情もある。このサイトは、売り手と買い手が直接やり取りする仕組みになっている。物件を掲載する売主はほとんど日本人だから、その商談相手として言葉が通じる日本人しかあり得ないと考えて、家いちばサイトでは外国語対応を一切やっていない。それでも、外国の人は、どうやら勝手に翻訳して物件問合せをしてくる。売主とのやり取りを見ていても、外国人側で日本語に翻訳するケースと、日本人の売主が翻訳しながらやり取りするケース、そのほか、売主さん自身が英語が堪能なケースなど様々だ。すなわち、このようなセルフサービスなサイトだからこそ、むしろ国境と言語の壁を超えてしまったと言っていい。 地域に馴染めるかどうか しかし、外国の利用者が急増しているが、実際に買えている外国人はまだわずかだ。やはり、売主さんが「外国の人に売ってよいものか?」と迷いがあるようだ。ご近所の手前もある。単に国籍だけで相手を判断するのは差別になってしまうが、現実はまだそんなところだ。日本語を理解できない外国の人が、「ゴミ出しのルール」のような地域のマナーをちゃんと守ってくれるのか、ひとつひとつはそういう不安だ。 そのため、これからが勝負だと思う。実際に外国人が日本の空き家を買って、トラブルを起こすのか、起こさないのか、そういう事例の積み重ねによって変わってくるだろう。しかしそもそも、日本人同士でもトラブルは起きる時は起きる。都会と田舎で考え方が違うということもある。だから、外国人だからという理由だけの偏見はなくしていくべきだ。 日本人が忘れつつある価値観こそ 家いちばでの売主、買主のやり取りを見ていても、翻訳ソフトを介してのコミュニケーションではあるが、そこから人間としての共感が生まれて、うまくまとまる商談もある。技術の進歩が人間を人間らしくしてくれる。特に、古いものや歴史文化に価値がある、大事にしたいという思いに国境はない。むしろ、そのことをつい忘れがちになっている我々日本人こそ、反省すべきと感じることもある。この流れが、日本人を目覚めさせるきっかけになるといい。 (家いちばコンサルタント 藤木哲也)
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