半分が空き家だったオフィスビルの再生
親から相続したビルが空室だらけ 所有者であったお父様からの相続により親族が所有者となったオフィスビルですが、ここ数年はビル経営がうまくいっておらず、ほとんどが空室の状態となっていました。建設時の借入金の返済も残っており、毎月のキャッシュフローがマイナスの状態でした。都心の立地であり、売却による資金で借入金を返却できる物件でしたが、ご先祖から受け継いだ土地を大事にされたいという所有者の思いがあり、ビル経営を継続することとしました。しかし、手元の資金に限りがあり、早期にオフイス全室をテナントに入居してもらい、安定的な家賃収入が得られるようにすることで、残った借金を返す必要がありました。 競合オフィスも多くて設備も古いという苦境 まず、1階の店舗区画は、長年お父様のオフィスとして使われており、そのままで貸し出せる状態ではありませんでした。最上階は自宅として使われていましたが、これを住宅として貸し出すには、設備から全てやり直す必要がありました。また、周辺はオフィス街のため、住宅のニーズがあるのかも不確かでした。事務所のニーズについても、調べてみると明らかに供給過剰で、築古の雑居ビルの空室が大量にある状態でした。本物件よりも駅に近いエリアにもオフィスビルの供給はたくさんあり、これらとの入居者を取り合うためテナントの誘致には苦戦が予想されました。建物全体も劣化しており、一部には、外壁からの水漏れや屋上の設備機器の鉄部に腐食が見られました。また、階段にはごみが溜まっているところもあり、管理もきちんと実施されていない状態でした。建物の劣化部分の改修、管理会社の見直し等、改善すべきポイントが多々ありました。 まずは管理会社の見直しから そのような中、コンサルティング業務をスタートして、最初に管理会社の見直しからはじめました。入居中のテナントには、古くから入居しているテナントもいます。現在、入居しているテナントには長く入居してもらいたいので、テナントとのコミュニケーションが大切です。そのため、テナントとコミュニケーションができる熟練のスタッフを抱える老舗の管理会社に委託をすることにしました。管理会社を変更しテナントとのコミュニケーションがはじまることで、表面化してきた数多くの不満をひとつひとつ解決していきました。 ターゲットを定めてデザインリノベーション 管理会社の変更と並行して、テナントのニーズを調査分析し、トイレやセキュリティなどへの要望を空室の改修企画にフィードバックしました。また、近傍で大規模な再開発が計画されており、新たなニーズが出てくることを想定されたため、ターゲットのテナント層を見直すことにも取り組みました。一例としては、最上階のかつての住宅部分については、クリエイティブな業種に好まれるような内装へと変更して、周辺の競合ビルと差別化しました。また、エントランスの改修(バリューアップ)を早めに行うことで、本物件のイメージ刷新をに取り組みました。その効果もあり、1階のオフィスだった区画には雰囲気のいいイタリアンの出店が決まりました。それにつれられうようにオフィスの空室も順次テナントがきまりました。段階的て改修工事の期間を含め、ほぼ1年のプロジェクト期間で、ビル全室で入居者が決まり、所有者も安定的な家賃収入を得られるようになりました。 (家いちばコンサルタント 藤木哲也) 【物件概要】 場所:東京都港区 場所:東京都港区 土地:83.27㎡ 建物:474.16㎡(築27年) 構造:SRC造・一部RC造 地下1階地上8階建て 用途:店舗・事務所ビル(一部居宅あり) 設計:タクトスペースクリエイト 施工:アカンプリッシュ
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