売りました体験談
60代半ばで夫が他界し悲しみの中にいる私たち親子に、夫の実家から相続した農地をどうするかという問題が容赦なく降りかかってきました。地域の不動産屋さん、全国規模の不動産業者、農地買取業者に当たって分かったことは、売却の可能性の低い、扱ったとしても媒介手数料の少ない土地は、取引の対象ではないという現実です。 相続土地国庫帰属制度を利用して、審査手数料6筆84,000円を支払って、もし、運良く申請が通ったとしても、道を挟んで3箇所に分かれている上に、地目がばらばらで特例がほぼ使えず、負担金を100万円納めなければならないという残念な事実が判明しました。 そんな八方塞がりの中で、私たちが一縷の望みを託したのは、息子が先輩から教えていただいた「家いちば」でした。まあ、土地の情報を載せておいて、いつかどなたかが関心を持ってくださればいいかと、土地の写真と、説明文を作成して投稿しました。 驚いたのは、その反応の早さでした。「えっ、もしかして、あの土地ってそんなに魅力的だったかしら」と勘違いするくらい閲覧されお気に入りマークの人数が増えていき、ご購入希望の方々のメッセージが次々に届きました。農地転用が可能な場所でもあったので、農地としてばかりでなく、宅地、カフェなど飲食店、はたまたキャンプ施設など、購入目的は多種多様でした。基本の返信内容は統一したとはいえ、一件一件土地の利用目的も質問内容も違うので、その返信に対応するのに追われてしまい、「大丈夫かな、私」と不安に思った日もあったほどです。 購入希望者の方々とのメッセージのやり取りの中で、両側が住宅であるにもかかわらず、接している道路に水管が通っていないという想定外の事実が分かり、結局売却相手は農地利用希望者に絞られました。それは、ある意味ラッキーでした。今回の売却までの経緯で、農業委員会の農地法許可申請は想像以上に厳しいことを知ったからです。 2,000㎡ほどの土地の一部を宅地に農地転用したとしても、それ以外の農地を安易に雑種地に地目変更することは認められそうもありません。購入者は耕作義務を負うことになるという予定外のことで戸惑われ、交渉が暗礁に乗り上げてしまったかもしれません。 今回、契約成立まで辿り着いたのは、ありがたいことに、買主さまが熱意をもって農業委員会の許可を得るために動いてくださったからです。買主さまは、本拠地を県外からこちらに移すために、売買物件の農地まで徒歩10〜15分の場所に住宅を購入されていた方でした。新たに事業(ブルーベリー園)を始める予定で、対象の土地の購入を希望されていました。おそらく、それほど近くにいても、「家いちば」という場がなければ、土地の売り手と買い手として巡り会うことはなかったでしょう。 農地として活かしてくださる方に土地をお譲りすることができたのも、出会いの場をご提供くださった「家いちば」のお陰と、感謝しております。農業委員会の許可の関係で、商談成立まで、そしてその後も紆余曲折があり長らくかかりました。その間、経緯を見守ってくださり、また、こちらの都合もお聞き入れくださりありがとうございました。
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