公開Q&Aコーナー
ウナギさん
60代
耐震改修はやったほうがいいですか?
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近年大きい地震が続いており心配です。やはり耐震改修などやったほうが良いのでしょうか?
まずは「新耐震基準」で建てられているかは確認済みでしょうか。これは、築年数である程度すぐに分かるので、ネットなどで調べてみてください。それで新耐震基準ならば、ひとまず合格と考えていいでしょう。
新耐震基準でない場合は「旧耐震」と呼び、何らか対策をすべきとされます。しかし、旧耐震だから即危険というわけでもなく、建てられた当時の法規制に関わらず進んで丈夫に作られている可能性もあります。旧基準以前のずっと昔に建てられた建物が、数々の大地震に耐えて現存しているケースも珍しくありません。したがって、この先はその建物個別での診断、判断が必要となります。
そこで「耐震診断」の話となりますが、これ自体に費用がかかります。しかしたいていの市町村でこの耐震診断費用の助成制度を設けてますので、まずは役所にお問合せください。
さて、ここからが大事ですが、耐震診断をすればほぼ確実に「悪い結果」が出ることを覚悟してください。がん検診とは違います。新耐震基準の10分の1以下の強度、と診断されることも珍しくありません。それでも「即危険」ではありません。街中のほとんどの建物がその状況にあります。それが今の日本の「現実」です。
神戸の大震災の時も、多くの建物が倒壊している中で、旧耐震でも耐えた建物もありました。反対に新耐震でも損壊した建物もありました。ただし、それぞれの確率に違いはあります。そもそも、そんな直下型の大地震が自分の住む土地にいつやって来るのか、それも確率論でしかありません。
それゆえに、人生全体を俯瞰するところから考えるべきです。たとえば、リタイヤ後でこの先もずっとその建物に住み続ける可能性が低ければ、早めに新耐震基準のマンションに引っ越してしまうという選択肢もあります。反対に、これから子育てで、将来は子供に譲る予定があれば、費用をかけてでも耐震改修すべきでしょう。
さて、耐震改修をするとして、一般的な木造一軒家の構造補強工事そのもので100万、そのための診断や設計に数十万程度ですが、そのほかで意外とかかるのが、内装工事費です。それもそのはず、柱や梁を補強するのに、床や壁や天井を剥がさないといけません。剥がせばその後に復旧が必要です。そうするとついでにデザインや設備も新しくして…とそうやって工事費全体が何倍にも膨れ上がってきます。
もちろん、いろんなものが新しくなれば、建物の価値そのものが上がります。もし売却しなければならなくなった時に、工事する前の状態よりも高く売れるでしょう。それでも、数千万近い出費になる場合もあり、銀行借入も必要となり、慎重に検討したいところです。
そのため、耐震改修までやる予算と覚悟がなければ、安易な気持ちで耐震診断をすることをお勧めしません。悪い結果が出て落ち込むだけです。また、診断結果は売買時に買い手に説明する義務もあり、耐震診断をしたために売りづらくなる、ということも起こり得ます。
これから中古住宅を買おうと考えてる人も、この点は頭に入れておきましょう。耐震工事は大掛かりになるため、住みながらの工事は困難です。そのため、耐震工事をやるなら、買った後にすぐやるのがベストです。購入と同時なら、リフォーム工事費もセットでローンを組むと借りやすくなります。旧耐震の物件を買う時は、耐震費用も見込んで、その分安く買えるといいです。
家いちばコンサルタント 藤木 哲也